「謹賀新年」「恭賀新年」は上司や目上の知人に最適
例えば、社会人になりたてで会社の上司に年賀状を出すときに一番迷うのが賀詞や挨拶文の書き方かもしれません。
年賀状に書く賀詞には決り文句があって、漢字仮名混じり文タイプと漢字のみのタイプがあります。「謹賀新年」「恭賀新年」は後者に属しますが、実は両方のタイプの長所を併せ持っています。
「明けましておめでとう…」などの漢字仮名交じり賀詞
漢字仮名交じりで文章になった賀詞は「謹んで新年のお祝詞を申し上げます」「明けましておめでとうございます」「謹んで新春のお慶びを申し上げます」などが代表例です。
長所: 謙譲語や尊敬語を使った丁寧な御祝いの言葉です。年賀状のマナーの点からもパーフェクト。上司や目上の人への年賀状に書くのに最適。
短所: 「謹んで」から始まる文の場合、年賀状を受け取る側の性格によっては少し大仰で堅苦しい印象を与えてしまうかもしれません。書く側も社会人ホヤホヤだったりすると抵抗感があるかも。「明けましておめでとうございます」は常識的で柔和なタッチながら、ちょっぴり幼稚な感触があります。
また、このタイプは長いので場所をとります。賀詞は文章の一部ですが、イラスト的に装飾して配置することが多いアイテムです。年賀はがきのサイズは限られており、イラスト・写真・文章をバランス良くレイアウトするのに苦心するかもしれません。
「賀正」「寿」など漢字だけの1文字・2文字賀詞
1文字:「賀」「寿」 2文字:「賀正」「迎春」「頌春」などが代表例です。
長所: デザイン的な意味で、装飾が映えます。ストレートに伝わる印象です。
短所: 1文字や2文字の賀詞を上司や恩師に使うのはマナー違反とされています。これらは目上から目下の人間に対して発する語で、殿様が家来に「めでたいのう」とか言っちゃうイメージです。
「謹賀新年」など漢字4文字賀詞
上記の2タイプの長所短所が出揃ったところで「謹賀新年」「恭賀新春」の出番です。
長所: 年賀状のマナーに適っており、どんな相手に対して使ってもOK。男性が使っても女性が使っても高齢者が使っても若者が使ってもOK。最も社会に浸透した決り文句なので、読んでも書いても抵抗感がなく使いやすい。
場所を取らず、レイアウトしやすい。装飾が映えて、デザインしやすい。
短所: ありません。完全無欠ですw。
「謹賀新年」と「恭賀新年」の違い
「謹賀新年」「恭賀新年」に意味上の違いはありません。「謹んで新年をお祝い致します」か「恭しく新年をお祝い致します」かという表現の違いだけです。どちらも目上の人に向かって新年のご挨拶をするイメージです。
年賀状は元旦に出向いて新年の挨拶をする代わりで、言わば簡略化された儀礼です。元旦に訪れた先の相手と対面して最初にする行動をイメージして下さい。誰でも折り目正しいしぐさで深々とお辞儀しながら「明けましておめでとうございます」とお祝いの言葉を述べるはずです。この一連の所作と言葉を4文字で過不足なく表現したのが「謹賀新年」であり、「恭賀新年」です。
「謹賀新年」の意味
「謹」は「謹む(つつしむ)」ことで、語感から「控える」「遠慮する」の意味に捉えがちですが、この漢字は、相手に敬意を払い、礼儀正しく、かしこまった様子を表しています。
「賀」は「賀す(がす)賀する(がする)」ことで、お祝いの言葉の中の「おめでとうございます」に対応しています。
「新年」はそのまんま「新しい年」ですね。お祝いの言葉の中の「明けまして」に対応しています。
「恭賀新年」の意味
「恭」は「恭しい(うやうやしい)」ことで、「謹」と同様に相手に敬意を払い、礼儀正しく、丁寧な態度を表しています。
後の部分は「謹賀新年」と同じです。つなげると「敬意を込めて「明けましておめでとうございます」とご挨拶致します」という意味になるわけですね。
この他、「年」を「春」にした「謹賀新春」「恭賀新春」もよく使われます。
「新年」と「新春」の違い
「初春をお慶び申し上げます」のように年賀状の賀詞に「春」という漢字がよく使われますね。
1月なのになんで春?と思うかもしれませんが、これは明治までは太陰暦を使っていて、立春前後を正月としていた名残りです。中国では現在でも旧正月を賑やかにお祝いします。
つまり、「新春」とは正月のことであり、「新年」と同義ということです。「新年」と書くか、「新春」と書くかは、その時のフィーリングで選びましょう。
「謹賀新年」と挨拶文の相関ルール
年賀状の賀詞と挨拶文にはバランスが求められます。マナーにも関わってくる決まり事もあります。
賀詞の意味を挨拶文で繰り返さない
同じ意味を賀詞と挨拶文の両方で重複して使うのはタブーです。「謹賀新年」イコール「敬意を持って新年のご挨拶を致します」なので、挨拶文に重ねて「新しい年を迎え・・・」とか「新たな年が明けて・・・」とか書いてはいけません。
賀詞を赤い文字で書くのはNG?
年賀状のマナーで、賀詞を赤い文字で書くのは問題なし、OKです。しかし、挨拶文を赤で書くのはマナー違反とされています。
昔は文書の文字はほとんど黒でした。朱色(赤)は主に注意喚起か訂正に使われました。赤色自体が「緊急」「警鐘」「誤り」といったネガティブなイメージを持っていたわけですね。正月の挨拶にはふさわしくないとされたのは自然な成り行きだったと思われます。
但し、賀詞は年賀状という文書の表題に当たるわけで、挨拶文より目立たせるのが決まり事です。文字も大きくしますし、イラスト的に装飾も施します。人の注意を引くような目立つ色を用いても違和感はありません。
挨拶文にしても、現代は筆記用具もパソコンでの印字もカラフルになって、好みの色を自在に使える環境です。さすがに目がチカチカするような明るい赤や蛍光色はどうかと思いますが、赤褐色や暗赤色の挨拶文があっても不快に感じる人はいないでしょう。要は賀詞とのバランスで、賀詞より目立つ色は挨拶文に使わないことを心掛ければいいだけだと思います。
「謹賀新年」を使える時期はいつまで?
店舗や自治会で年末に「謹賀新年」のポスターを貼り出しますが、これはいつまで貼っておくものなのか、どのタイミングで片付けていいのか迷うこともありますね。基本的には年賀状と同じ1月7日の松の内までです。※関西では松の内は1月15日まで
1月7日の夕方以降か1月8日の早朝に片付けましょう。